シンガポールのコンド契約更新|交渉できること、できないこと
シンガポールで賃貸に住んでいると、契約満了の少し前にオーナーから更新の打診が来ます。そこで出てくる金額が相場より高いのか妥当なのかは、住んでいる本人にはわかりにくい。しかも交渉に失敗して引っ越すとなると、費用も手間も大きい。だから提示額をそのまま受ける人が多いのだと思います。
ただ、更新は交渉の余地がある場面です。どこが動いてどこが動かないのかを知っていれば、話の持っていき方が変わります。
切り出すのは満了の2〜3ヶ月前
更新の話は、契約満了の2ヶ月ほど前に動き始めるのが一般的です。早すぎると相場観が固まらず、遅すぎるとオーナー側が次のテナント探しに動いてしまいます。
ただ、タイミング以上に効くのは市況のどちら側に立っているかかと思います。空室が増えて賃料が下がっている局面ではテナントが強く、供給が絞られている局面ではオーナーが強い。自分がどちらにいるかを把握しないまま交渉を始めると、無理な要求になるか、逆に譲りすぎになります。
相場は実際の成約データで確認できる
感覚や仲介会社の説明だけで判断する必要はありません。民間住宅の賃貸については、実際に成約した賃料のデータが公開されています。同じコンドミニアム、近い間取り、直近数ヶ月の成約を見れば、提示額が相場のどのあたりかは自分で確認できます。
交渉の場では、この数字を持っているかどうかで説得力がかなり違ってきます。「高いと思う」ではなく「同じ物件の直近成約がこの水準」と言える状態にしておくのが、いちばん効く準備かと思います。もっとも、データを見せても一切動かないオーナーもいるという話は聞きますので、これで必ず下がるというものでもなさそうです。
交渉できるもの
賃料だけが交渉対象だと思われがちですが、実際には条項の方が動かしやすいこともあります。
| 項目 | 動きやすさ |
|---|---|
| 月額賃料 | 市況次第 |
| 契約期間 | 動きやすい |
| ディプロマティック条項 | 2年契約なら通りやすい |
| 少額修繕の自己負担上限 | 動きやすい |
| エアコンの定期清掃 | 交渉余地あり |
| 家具・設備の追加 | 賃料据え置きの代替 |
契約期間を長くして賃料を抑える
オーナーにとっていちばん避けたいのは空室期間です。1年ではなく2年で確定させる代わりに賃料を据え置く、という交換は成立しやすい話かと思います。逆に、近いうちに帰任や転居の可能性があるなら、期間を延ばすのは危険です。
ディプロマティック条項
転勤や帰国で契約期間の途中に退去せざるを得なくなったとき、一定の期間が過ぎていれば事前通知で解約できる条項です。2年契約では入っていることが多いものの、自動的に付くとは限りません。解約できるようになるまで何ヶ月か、通知は何ヶ月前に必要か。条件は契約書の文言で確認してください。
少額修繕の自己負担
設備が壊れたとき、一定額まではテナント負担という条項が入るのが一般的です。この上限額は交渉の対象になります。築年数が経った物件や設備が多い物件ほど、ここを下げておく価値がありそうです。
賃料が下がらないときの代替案
オーナーが金額に応じない場合でも、実質的な負担を減らす道はあります。エアコンの定期清掃をオーナー負担にする、古くなった家電を入れ替えてもらう、内装の一部を直してもらう。金額の譲歩より受け入れられやすいことがあります。
交渉しにくいもの
仲介手数料の慣行。誰が負担するかは契約期間や賃料水準によって業界の慣行がありますが、個別交渉で慣行を大きく覆すのは簡単ではなさそうです。
敷金の水準。1年契約なら1ヶ月、2年契約なら2ヶ月が一般的です。ここを削る交渉はあまり通らないようです。
更新しないと決めた場合
退去する場合は、原状回復の範囲で揉めやすいので先に確認しておきます。通常の使用による劣化(normal wear and tear)は借主負担ではありませんが、その線引きは曖昧になりがちです。入居時に室内の状態を写真で残していれば、この場面で効きます。残していない場合でも、退去の立会いには同席しておいた方がよさそうです。
まとめ
更新交渉で結果を分けるのは、話し方より準備ではないかと思います。実際の成約データで相場を押さえること、賃料以外にも動かせる条項があると知っておくこと、そして自分が引っ越しても構わないのかどうかを先に決めておくこと。この3つが揃っていると、提示額をそのまま受けるしかない状況にはなりにくくなります。
よくある質問
Q. シンガポールの家賃は更新時に交渉できますか?
交渉できます。ただし結果は市況に大きく左右されます。空室が増えて賃料が下がっている局面ではテナントが強く、供給が絞られている局面ではオーナーが強くなります。交渉に入る前に、同じ物件や近い間取りの直近の成約賃料データを確認しておくと、提示額が相場のどのあたりかを根拠を持って話せます。
Q. 更新の交渉はいつ切り出すのがよいですか?
契約満了の2ヶ月から3ヶ月前が一般的です。早すぎると相場観が固まらず、遅すぎるとオーナーが次のテナント探しに動いてしまいます。ただしタイミング以上に効くのは市況のどちら側に立っているかなので、その把握を先に済ませておく方が重要かと思います。
Q. 賃料が下がらないとき、ほかに交渉できることはありますか?
あります。契約期間を2年にする代わりに賃料を据え置く交換は、成立しやすい組み合わせです。ほかにも、少額修繕の自己負担上限を下げる、エアコンの定期清掃をオーナー負担にする、古くなった家電を入れ替えてもらうといった条件は、金額の譲歩より受け入れられやすいことがあります。
Q. ディプロマティック条項は必ず付いていますか?
2年契約では入っていることが多いものの、自動的に付くとは限りません。転勤や帰国で契約期間の途中に退去する場合に、一定の期間が過ぎていれば事前通知で解約できる条項です。解約できるようになるまでの期間や、通知が何ヶ月前に必要かは契約によって異なるため、契約書の文言で確認してください。
シンガポールで事業と数字を見ている人へ
World Finance Edu はシンガポール拠点で、フラクショナルCFOとしてスタートアップや中堅企業のファイナンスを見ています。会社を作ったあとに必ず出てくる資金繰り、資本政策、投資家対応の話は、ファイナンスの学習コラムで扱っています。
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