DCF法とは|企業価値の計算式と具体例
DCF法(Discounted Cash Flow法、割引キャッシュフロー法)とは、企業や資産が将来生み出すキャッシュフローを現在の価値に割り引いて、その価値を計算する方法です。M&A(企業の合併・買収)の価格算定、株式投資、不動産評価、社内の投資判断まで、ファイナンスの実務で最も広く使われる企業価値評価の手法です。
この記事では、DCF法の考え方、計算式、割引率の意味、そして前提の変更が算定結果に与える影響を、初心者にも分かりやすく解説します。
DCF法の基本的な考え方
DCF法の出発点は、「今日の100万円は、1年後の100万円より価値が高い」という考え方です。今日の100万円は運用すれば増やせるからです。これを「お金の時間的価値」と呼びます。
逆に言えば、将来受け取るお金は、その分だけ割り引いて評価する必要があります。この「割り引く」操作がディスカウント(Discount)です。企業の価値は、その企業が将来生み出すキャッシュフローをすべて現在価値に割り引いて合計したもの、というのがDCF法の核心です。
DCF法の計算式
それぞれの意味は次のとおりです。
- FCF(フリーキャッシュフロー):事業が生み出す現金から、事業を維持・成長させるための投資を差し引いた、自由に使える現金。計算式と決算書からの求め方はフリーキャッシュフローがマイナスの会社は危ないのか|FCFの読み方で解説しています。
- r(割引率):将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くためのレート。通常はWACC(Weighted Average Cost of Capital、加重平均資本コスト)を使います。
- ターミナルバリュー(継続価値):予測期間(通常5〜10年)より先の全期間の価値をまとめて計算したもの。
計算のステップ(具体例つき)
ステップ1:フリーキャッシュフローを予測する
まず、今後5年程度の事業計画をもとにフリーキャッシュフローを予測します。たとえば、毎年100億円のFCFを生み出し、年3%で成長する会社を考えます。
ステップ2:割引率(WACC)を決める
WACCは、株主が要求するリターン(株主資本コスト)と、銀行など債権者が要求するリターン(負債コスト)を、資本構成で加重平均したものです。ここでは8%とします。
ステップ3:ターミナルバリューを計算する
永続成長率は、長期的な経済成長率やインフレ率を参考に、通常0〜2%程度の保守的な数字を置きます。
ステップ4:すべてを現在価値に割り引いて合計する
各年のFCFとターミナルバリューを割引率で現在価値に直し、合計したものが事業価値(エンタープライズバリュー)です。そこから純有利子負債を引くと、株式価値が出ます。
DCF法の注意点:算定結果は前提によって大きく変わる
DCF法は理論的に最も妥当な方法とされる一方、実務では、前提によって算定結果が大きく変わる点に注意が必要です。特に影響が大きいのは次の2つです。
- 割引率:WACCを1%変えるだけで、企業価値は数十%動くことがあります。
- 永続成長率:ターミナルバリューは企業価値全体の5〜7割を占めることが多く、ここの成長率の置き方が結果を大きく左右します。
だからこそ実務では、DCF法の結果を単独で使わず、PERやEV/EBITDAといったマルチプル(倍率)による評価と突き合わせて妥当性を確認します。マルチプル法については、PER・PBR・EV/EBITDAとは?マルチプル法による企業価値評価入門で解説しています。また、そもそも将来キャッシュフローを予測できない段階の会社ではDCF法が機能しません。その場合に実務で何を使うかはスタートアップの企業価値評価|売上のない会社に値段がつく理由で扱っています。
不動産のDCF法
DCF法は不動産評価でも標準的な手法です。考え方は同じで、物件が生み出す賃料収入から経費を引いたキャッシュフローを予測し、売却想定価格(復帰価格)とあわせて割り引きます。不動産鑑定評価や収益物件の投資判断で広く使われています。
まとめ
- DCF法は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を計算する方法。
- 計算にはFCFの予測、割引率(WACC)、ターミナルバリューの3つの要素が必要。
- 前提次第で結果が大きく動くため、マルチプル法との併用が実務の基本。
よくある質問
Q. DCF法とは何ですか?
企業が将来生み出すキャッシュフローをすべて現在価値に割り引いて合計し、企業価値を求める方法です。出発点は、今日の100万円は1年後の100万円より価値が高いというお金の時間的価値の考え方で、将来受け取るお金はその分だけ割り引いて評価します。
Q. DCF法の計算に必要な要素は何ですか?
3つです。フリーキャッシュフロー(FCF)の予測、割引率(WACC)、ターミナルバリューです。今後5年程度の事業計画からFCFを予測し、株主資本コストと負債コストを資本構成で加重平均したWACCで割り引き、予測期間より先はターミナルバリューでまとめます。
Q. DCF法の注意点は何ですか?
前提によって算定結果が大きく変わることです。WACCが1%変わるだけで、企業価値が数十%変動する場合があります。ターミナルバリューは企業価値全体の5〜7割を占めることが多く、永続成長率の設定も結果を大きく左右します。そのため実務では、DCF法の結果を単独で使わず、マルチプル法と併用します。
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